

1932年キングがレモン果汁中よりビタミンCを結晶状に分離し、これがヘキスロン酸と同一物質であることを証明しました。
1933年ハワースが、ビタミンCの化学構造を明らかにし、セント・ジエルジと共同してこの物質を「アスコルビン酸」(壊血病を治すものという意味)と命名しました。
今日でもビタミンCのことをアスコルビン酸といいます。
その後もビタミンの発見ラッシュは、1950年代まで続きました。
ビタミンの発見とは分離することビタミンは、動物の体の維持・成長に不可欠なものとして、その欠乏症を起こす原因物質として発見されてきました。
ここでお気づきかと思いますが、まずその物質の本体を化合物の形で食べ物の中から分離し、次にその分離した化合物の化学構造を決定しなければなりません。
化学構造が決定すれば、何らかの形で人間の手で合成する道が聞かれるのです。
人間の手で化学合成することができれば、安い原料を使って、大量に安く生産できることになります。
栄養素の相互作用ビタミンを単体として発見する時代の後にやってきたのは、ビタミンとビタミンあるいはビタミンとミネラルを組み合わせると体の中での働きがよくなるという考え方です。
例えばビタミンB群をそれぞれ単独で大量に摂るよりも、グループとしてまとめてバランスよく摂ったほうがはるかに有用な働きをします。
活性酸素やフリーラジカルと呼ばれる物質が、体を酸化する(さびつかせる)のを防ぐためには、抗酸化ビタミンであるビタミンC、ベータカロチン、ビタミンEを単独で、大量に摂るよりも、グループで適量摂ったほうがはるかに効果的に酸化を防げます。
こうした栄養素の相互作用が注目された時代は、1980年代半ばまで続きました。
栄養素の吸収1980年代半ばから年代半ばくらいまでは、どういう形の栄養素がよく吸収されるのかが注目されました。
例えば、硫酸など無機物とミネラルの化合物よりも、グルコン酸、クエン酸など有機物とミネラルとの化合物のほうがよく吸収されます。
さらにアミノ酸でミネラルをキレートさせたもののほうが吸収はよくなります。
キレートというのはこの場合、アミノ酸がミネラルを挟んだ形のものをいいます。
植物性化学物質(ファイトケミカル)1990年代から今日に至るまで注目を集めているのが、植物に含まれているビタミンやミネラル以外の栄養素です。
植物に含まれているのは、ビタミン・ミネラルや炭水化物・脂肪・アミノ酸だけではありません。
人聞がまだ発見していないほかの有用な物質も元から含んでいます。
植物性栄養素、あるいは植物性化学物質(ファイトケミカル)と呼ばれる植物に含まれる天然成分が、次々と注目されるようになり、特に健康に対する効果が精力的に研究されるようになってきたのです。
例えば、赤ワインに含まれるポリフエノール、トマトに含まれるリコぺン、大豆に含まれるイソフラポンなどがそれに含まれます。
こうした動きは、アメリカ国立がん研究所が植物性化学物質の研究・調査のための特別開発プロジェクトを1990年にスタートさせたことで活発化しました。
以上がビタミンの発見から植物性化学物質に対する最近のフィーパーまでの大まかな流れです。
しかし1930年代から年先を見越していた人がいました。
セント・ジエルジはビタミンCの発見者でノーベル賞も受賞しましたが、あることに気づいていました。
彼は、自分が分離し化学構造を決定したビタミンC単独よりもそのビタミンCを含む食べ物、例えばレモンを与えたほうが、治療効果が大きいことに気づいていたのです。
その後レモンからビタミンPを発見し、ビタミンPには、血管を強くする働きがあることが分かりました。
しかしそれだけではなかったのです。
彼はたびたび、ビタミンCだけを摂るよりもレモンなどビタミンCを含む食べ物を食べなさいと人に勧めていました。
しかしビタミンの発見ラッシュの中で、彼の言葉に耳を傾ける者はいませんでした。
分離されたビタミンだけに価値があり、食べ物の残りの部分には何の価値もないというのが当時の考えでした。
不純物のない純粋な物質に最大の価値があったのです。
セント・ジェルジの忠告の意味が最近になってようやく少しずつ分かってきました。
食べ物全体の栄養素としての価値は、そこから分離精製された栄養素の価値をはるかに上回るのです。
その理由のすべてはまだ解明されていませんが、1999年にノーベル医学生理学賞を与えられた理論がその理由の一部を説明しています。
そのことについては、第5章で詳しく述べます。
C現代人に意外に多いビタミン欠乏症古典的欠乏症と欠乏の段階現代のようにもののあふれた時代に、ビタミンの欠乏症なんであり得ないと思っている方が多いのではないでしょうか。
ビタミンの欠乏症と一般にいわれているのは、脚気や壊血病ですが、それは放っておくと死亡するほどの重い病気です。
ビタミン不足にも程度があります。
脚気や壊血病などビタミンの発見にかかわってきたような重い欠乏症は、古典的欠乏症というべきものですが、そのような重い欠乏症に至る前に不足している段階がいくつかあります。
M・プリンは、ビタミン欠乏を5段階に分けました。
第1段階組織中のビタミンの蓄積が減り、尿の排出量も滅ります。
第2段階生化学的な段階で、ビタミンを必要とする酵素の働きが低下します。
ビタミンには、体の中で行われる化学反応の仲介をする酵素を補う補酵素としての役割があります。
例えば、ビタミン血の量が不足すれば、赤血球の中のトランスケトラーゼという酵素の働きが悪くなります。
逆にいうと、ビタミンの潜在的な不足は、この酵素の働きを測定すれば分かるのです。
しかしこの段階では、まだ症状として何も現われていないので、病院でトランスケトラーゼの検査を受ける機会はまずありません。
トランスケトラーゼの働きの悪い患者の症状は、胸痛・腹痛、睡眠障害、人格の変化、原因不明の発熱、下痢、慢性疲労、夜間によく汗をかくというもので、第3段階に相当します。
この患者たちには、特に体の異常がないので、ふつう神経症だと診断され、精神安定剤を処方されるか、精神科を紹介されることになります。
何らかの症状の出てくる第3段階で、トランスケトラーゼの検査を受ける機会がわずかながら出てきますが、見過ごされることが多いのです。
第3段階不眠、眠気、イライラ、食欲不振など生理学的な症状が出てきます。
ここでやっとビタミン不足が表面に症状として出てきますが、それぞれの症状からどのビタミンが不足しているかということまでは分かりません。
つまりこの段階でビタミン欠乏を疑う場合には、ビタミンの検査を一通りしないと、どのビタミンが欠乏しているのか分からないということです。
第4段階この段階になると、症状は臨床段階になり、古典的欠乏症のいろいろな症状が出てきます。
先に述べたアメリカのRDA(推奨栄養摂取量)が基礎にしているのはこの段階なのです。
この段階になってやっと病院でも特定のビタミンの検査をすることになります。
第5段階この段階は最終段階で、そのまま放っておくと死亡してしまいます。
以上の五つの段階のうち、第3段階まではビタミンの潜在的欠乏と呼ぶべきもので、いままで問題にしてこなかった欠乏状態です。
第3段階で症状が出始めますが、病院に行っても、通常の検査ではどこも悪いところはないのですから、気のせいだということになります。
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